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自走式空想会社:クルーシブル

二匹の空想生命体・トビスケとまほそがファンタジーを創ったり、おいしいご飯を食べたりするブログ。

燦然のソウルスピナ 第三話・第十六夜:密偵

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燦然のソウルスピナ 第三話・第十六夜:密偵




         ※


 波しぶく島の首都:カテルの波止場に隣接する倉庫街の暗がりをするり、と抜け出す影があった。

 それは密航者であった。
 だが、その密航者を運んできた法王庁からすればそれは意図的な、つまり図られた密航であった。員数をごまかし、荷に紛れて自らの密偵を潜り込ませる意図が法王庁にはあったのだ。


 老齢にさしかかりかけた男であった。灰色になりかけた頭髪にヒゲを蓄えていた。
 身なりはどこにでもいる、働き盛りをすぎた男のようであった。

 しかし、見るべき者が見ればその身のこなしには遅滞がなく、老齢から来るはずの関節の軋みなどどこにもないことに気がついたであろう。
 それは絶え間なく体幹と柔軟性を鍛え続け、その鍛練と同じかそれ以上の時間、肉体の手入れを抜かりなく行ってきた者だけが獲得することのできる技だと気がついただろう。


 バントライン・パダナウ――バートンという愛称で呼ばれるこの男こそは、かつてアシュレの従者であったユーニスの祖父だった。バラージェ家の執事と密偵を兼任する。

 法王庁から奪取された聖遺物奪還の任を受け旧イグナーシュ領に赴くアシュレを補佐していた男である。

 国境の村:パロでアシュレに重要な情報を届けた後、バートンは一度、エクストラムに戻った。そして、事件の解決を待ち、法王庁の遠征軍に先んじて再びイグナーシュに赴き、アシュレが聖遺物強奪の賊を追討する旅に無断で出立したことを知ったのだ。

 なにかある、と直感した。

 幼いころからアシュレを知るバートンは、己の孫同然であった少年騎士――そして、当主:グレスナウ亡きいまではバートンの主である若き騎士が、法王庁への報告を怠るような気質の持ち主ではないことを、充分すぎるほど心得ていた。


 バートンは一週間をイグナーシュで過ごした。

 そして、困窮に喘ぐ旧イグナーシュ領の民を救済し、また生活と治安とを恒久的に回復させるため、一時的に法王領に編入するとの名目で進駐してきた聖堂騎士団と聖遺物管理課の先遣隊と入れ替わりに、いったん法都:エクストラムへ戻ろうとした。

 ともかくバラージェ家の屋敷で息子の安否を気づかう未亡人:ソフィアに、とにもかくにも無事であるという報だけは持ち帰ろうとしたのだ。

 その矢先、法王庁側が接触を持ってきた。
 すなわち、ラーンからの正規の委任状を携えたジゼルが、復興の悦びとようやく到着した救いの手がもたらした物資の分配に湧く人々の輪から、ひとり離れようとするバートンを呼び止めたのだ。

 知己、という堅苦しい記し方が滑稽になるくらい互いを知るふたりであった。

 バラージェ家とオーベルニュ家。
 古い貴族の血に連なるふたつの家が結びつきを強めるため取り決めた結婚――将来アシュレの奥方となることを定められたジゼルのことを、バートンもまた幼少からよく知っていた。


 許嫁の取り決めはアシュレ八歳、ジゼル十二歳のときであった。
 そしてその取り決めは、本人たち以外には秘されていた。

 もし成人までにアシュレに《スピンドル》能力の発現がなかった場合、さらにアシュレが聖騎士に昇格できるほどの能力者でなかった場合、この婚約は破棄されることになっていたからだ。

 幼いふたりは言いつけを守った。
 ジゼルは周囲に口を酸っぱくして釘を刺されてようやくに、アシュレは素直に。
 
 いまでもやや優等生気質の強すぎるきらいのあるアシュレだが、当時にあってさえ、その責任感の強さは、バートンであっても驚かされるところがあった。

 幼少期は病弱で、そこから抜け出してもまだ少女のような、ばら色の頬と柔和な性格・顔立ちの持ち主がときおり見せる《意志》の強さに、バートンは貴くまぶしいものを見るような心持ちになったものだ。

 そして同時に、ひどく遠く危うい場所にいつかこの少年が行ってしまうような予感を覚えた。


 おそらく、当時の当主であったグレスナウもそのような危惧を抱えていたのだろう。

 まったく正反対の気質――勝ち気で奔放で、さっぱりとした言動の――少女を許嫁としたのは、単に政治的な背景からだけではない、とバートンは思ったものだ。

 ただまあ、ジゼルは薬としては劇薬過ぎたようで、その過激なアプローチに耐えかねたアシュレがバートンの居室に助けを求めて飛び込んできたり、ユーニスやレダマリアが幼いながらの乙女心を傷つけられたり、嫉妬に燃えたりと、とにかく来訪の度に一悶着も二悶着も起してくれる娘だった。

 それでもバラージェ家に新鮮な空気を運んでくれるという役割はした。

 もっとも、もしかしたら当のオーベルニュ家でもジゼルを持て余していたのかもしれない。なんのかんのと理由をつけてはジゼルはバラージェ家に入り浸った。


 アシュレが《スピンドル》能力を発現させ、聖騎士となり、その初任務を済ませたら――法王から賜われるはずの恩賞に替えて、アシュレはジゼルを娶る申し出をする、というのが両家の取り決めだった。

 その初任務こそが、今回の事件の発端、イグナーシュ領での出来事だった。

 現地でバートンが得た情報を総合すると、任務を続行するためとはいえ、なんの報告もせずにアシュレは旅立ったわけで、どんな事情があるにせよ、聖騎士の行いとしては少なからぬ難があった。

 もし、アシュレがイゴの村人に言い残したという『追討に赴く』なる言葉が、法王庁からの離反を意味するであるとしたら、アシュレはジゼルとの婚姻をも破ったことになる。

 なにごとも真面目に捕らえすぎるところのあったアシュレを知るバートンからすれば「よくやった」と褒めてやりたいくらいだが、その後の政治的状況を考慮すると手放しに称賛するわけにもいかない。


 そこへ、民衆の救済という大儀の御旗を掲げた救援部隊を、ジゼルが率いていたのだ。

 もちろん、こちらもその任務を鵜呑みにすることはできない。
 バートンが疑問を抱くくらいだ。法王庁側も『聖騎士としてのアシュレの離反を疑っている』と考えるのが筋だった。

 ややこしい人物に、ややこしい場所で、おまけにややこしい状況で捕まったものだ、とバートンは神に毒づいた。

 聖騎士に任ぜられてからはとんと顔を出さなくなったジゼルとの邂逅はひさしぶりだったが、互いの顔を忘れることなどなかった。
 赤みを帯びた豪奢な金髪と、強烈な印象を残すタイプの美貌の持ち主である。忘れたり見間違えたりするほうが難しい。
 成人前、いや成人してからも治らなかったお転婆ぶりに手を焼かされ続けてきたバートンである。忘れろというほうがムリだった。

 奉仕活動中なのであろう、尼僧の僧衣と被り物に聖堂騎士団、聖騎士、聖遺物管理課と所属を示す記章、腕章、袖章を身につけた彼女は、ごった返す人波のなかで的確に使節に従軍してきた商人を装うバートンを見抜いた。

「バラージェ家のバントラインさま? ご同行いただけますね?」
 柔和なジゼルの微笑みにも、バートンは決して気を緩ませたりはしなかった。

 聖遺物管理課というその字面だけを追えば、異端審問課などとは違い、歴史的・宗教的遺物の発掘と回収、管理を司る内政的な部署だと勘違いしがちだが、それは大いなる間違いだということをバートンは心得ていた。


 聖遺物――多くの場合それは強大な力を秘めた《フォーカス》であり、それを法王庁の手に回収せよという任務の意味するところは、その聖遺物で武装した敵対勢力から実力で持ってそれを奪還する実動部隊こそ聖遺物管理課であるということだ。

 そして、聖遺物管理課にはさらに上位の使命が存在する。

 それは聖人認定の聖務だ。
 イクス教の教義に厳密に照らし合わせれば、聖人とは生前、そして、死後の奇跡により認定されるものとある。
 問題はこの“死後”の部分だ。

 この世界――ワールズエンデには数多の魔物が息づき、恐るべき不死性を備えた魔の氏族も実在する。そしてなにより、己の所領――《閉鎖回廊》のその深奥で、王として、あるいは恐れ多くも神を気取るオーバーロードたちの振う《ちから》は、民衆の思い描くところの“奇跡”となんらかわらない。

 その正否、正邪を見届け、確かめる任こそ、聖遺物管理課に在籍する聖騎士に課せられる最大級の聖務であった。

 聖人認定という聖務の困難さ、特殊性は聖遺物管理課が法王直属の機関であることからもうかがえる。これは異端審問課に匹敵する権力だ。

 このような特殊な所属、聖務に対し聖遺物管理課に属する聖騎士たちは、それらを全うするため、子飼いの――つまり私的な密偵を必ず囲う。

 それは正攻法だけではいかんともしがたい局面が現実には無数にあり、旗印として嫌でも目立ってしまう聖騎士の影として、汚れ仕事を担当する者たちが、やはりどうしても必要であったからだ。

 法王庁は聖騎士たちがいかなる人間を雇い入れたのか報告する義務までは課さなかった。
 これは管理がずさんなのではない。いざ面倒事が起きたとき、政治的にしらを切り通すための保険であった。


 バラージェ家の前当主:グレスナウもその例に漏れず、執事であるバートンが同時に密偵であることを法王庁に届け出たりはしなかった。

 だが、聖騎士となったジゼルはいつのころからか、それに気がついていたらしい。

 ジゼルのふたつ名――“聖泉の使徒”とは「いかなる嘘も見破る水鏡」の伝説から着いたものだという話に、バートンは眉をひそめたものだ。

 そうでなくともこの時代、エクストラム法王庁は西方世界で一、二を争う情報網を持つと恐れられた集団だった。

 バートンは連れ込まれた法王庁特使の天幕で聖騎士:アシュレの支援を前提とした捜索への協力を要請された。“教授”ことラーンと“聖泉の使徒”ジゼルテレジアのふたりからである。ふたりはアシュレを案じる様子で、暗にその離反の可能性をほのめかした。

 もし、仮に離反が明らかとなれば、バラージェ家への沙汰は相当なものとなるだろう。

 所領の、あるいは財産の没収程度で済めばよいほうで、異端審問課が口を挟まないとも限らない。

 アシュレの母:ソフィアはまだ四十にも達さない若き未亡人であった。異端審問官たちが女の口からどんな手管で、彼らの望む証言を引き出すのか、バートンはよく心得ていた。


 ラーンとジゼルは暗にそれをほのめかしながら、聖遺物管理課としてアシュレを支援したい、そのために彼の足跡を追いたい、とバートンに話した。

 つまり、バートンはバラージェ家とソフィアの身を質草に取られ、協力を強請られたのである。

 もちろん、バートンもこれまでいくども困難な状況を潜ってきた男であった。

「願ってもないこと」と快諾して見せた。
 それは半分は演技であり、しかし半分は本心だった。アシュレの安否とともに、同道した孫娘のユーニスのそれをバートンは案じていたのだ。無論、アシュレとユーニスを襲ったことの顛末をバートンは知らない。知るよしもない。

「それで具体的にはなにを調べればよいのですかな?」
「“なにか”をだよ。バントライン氏。わたしは貴方の、いや、貴方だけが持つその“なにか”を期待している」

 曲者ぞろいの法王庁で“教授”と徒名されるラーンの要求は、なるほど哲学的かつ直感的だった。

 だが、その言葉にしきれないニュアンスはバートンにはよくわかる――いや、むしろたいへんに馴染み深い感触ではあった。

 バートン自身に《スピンドル》能力はない。

 しかし、《スピンドル》とはヒトの《意志》が引き起こす強力なエネルギー反応だと、バートンは経験から学んでいた。

 そして、《意志》の《ちから》に無自覚であっては見落としてしまう“なにか”が聖騎士を代表とする《スピンドル》能力者たちが立ち向かう《世界》には無数にあることを、バートンは知悉していた。主であり無二の友であったグレスナウとともに幾多の暗い夜を駆け抜けた経験が、バートンに見落としてはならぬ“なにか”を見出す注意深さを養わせたのだ。


 それは予兆、前兆、しるし、だ。

 ラーンはあえて、法王庁がすでに得ているであろうアシュレの足跡についての予備情報を、限定的にしかバートンに開示しなかった。

 これはバートンという男をラーンが信用していないことのしるしであると同時に、なんらしかの化学変化――偶発的な遭遇が引き起こす“なにか”を期待しているのだとバートンは理解している。

 それにしても、妙な具合だ、と闇にひそみながらバートンは思う。

 ラーンからバートンが要請された案件は「アシュレダウと接触を持ち、状況と事情の詳細を報告させること、また同時に正規の支援体制を法王庁は整えつつあり、これを受けるよう通達すること。もし、接触できない場合は、その足跡を可能なかぎり細部に渡るまで調べ、ラーンに報告すること」だった。

 けれども、いったん法王庁に戻ったラーンたちとともに、秘匿された任務を負い商船に偽装したガレーシップに乗せられ辿り着いたのは、同じイクス教徒、それも勢力を拡大するアラム教のオズマドラ帝国に東方世界ではもはや唯一といってよい対抗組織:カテル病院騎士団の本拠地、カテル島だった。

 アシュレが聖遺物を強奪した賊を追い、イグナーシュ領から出立するのを影ながらカテル病院騎士のひとりが支援したことはすでに判明している。

 そして、その男が精鋭ぞろいのカテル病院騎士団で筆頭騎士を勤める、ノーマン・バージェスト・ハーヴェイであることも。


 そこまでわかっていながら、ラーンはあくまで今回の来訪は、新法王:ヴェルジネス一世の誕生を報せるためだとしらを切り通している。
 その裏で、バートンをアシュレ捜索に駆り出しておいて、だ。


 バートンはこの使節に同道してからというもの、首筋に走るぴりぴりとした感触が抜けずにいる。

 単刀直入に訊けば済むものを、あえて切り出さず、それなのに背後で秘密裏に諜報戦を仕掛けるこのやり方は、相手の失脚を狙う貴族たちの権力ゲームに構図がそっくりだ。

 ただ、多くの引け腰貴族と違うのは、ラーンはやるといったらやり通す男であり、その背後には強大な権力を備えた組織――法王庁が控えているということだ。


 軍事面では法王庁は聖堂騎士、従士隊を含めて正規兵は二〇〇〇程度、傭兵を雇い入れてまあ、四〇〇〇から五〇〇〇といったところだが、新法王:ヴェルジネス一世は十字軍の提唱に熱心であるらしい。

 アシュレの父、グレスナウが戦死した第十一次十字軍では、その総戦力は二十万に達した。これでも十字軍としては小規模なほうで、最大と言われた第九次では、なんと二十年に渡り二百万人もの人口が参戦したのだ。


 それだけの軍事力を揃える覚悟、いや、狂気が現在の法王庁では胎動している。

 あの思慮深いレダマリアという少女を、幼少時からよく知るバートンにとっては信じ難い話だが、権力の座に着くとともに豹変する指導者の姿は、ある意味で歴史のなかでは風物詩とも言えるありふれた光景だ。

 まさか、あのひとが、あのひとだけは、そんなふうには見えなかった、などというのは人間という生き物に対してよほどの無知か、無関心なだけであろう、とバートンは思う。

 いや、本人ではなく取り巻きの枢機卿団が吹き込んだ可能性だって大いにある。

 新法王選出ともはやひとつそろいの行事となった感のある新枢機卿の任命にあたり、ずいぶんときな臭い名前を聞いたことをバートンは忘れていない。


 十字軍などありえない、現実的ではないなどという都合のよい夢想に身を任せてよい時間は過ぎ去ったのだ。

 その強大な軍事力を背景に、法王庁はカテル病院騎士団を揉み潰そうとしているのではないか? これはその戦端を合法的に、大義の御旗によって開こうという工作の、その前哨戦なのではないか。

 そうバートンは疑っている。

 カテル島はひどい嵐だ。
 気候が穏やかなことで知られるカテル島で雪が積もるなどここ一世紀の記録にはないはずだ。


 薄暗い倉庫が風雪と叩きつける海水に軋みを上げるなか、バートンは身体の凝りをほぐす準備運動を行いながら、夜陰に沈むカテルの街並みを観察した。

 法王庁からの使節歓迎のためだろう。嵐の晩であるにも関わらず、カテルには明かりが灯っていた。ガラス窓を備える富豪の邸宅や商館、各国の騎士館はいうにや及ばず、港をぐるりと取り囲む城塞にもいたるところに篝火が焚かれている。

 灯台の尖端で燃やされる盛大な炎が、バートンのいる倉庫外の屋根裏部屋からもよく見えた。
 そして、バートンは夜陰に紛れて哨戒を続ける軍人たちの姿を幾度となく見た。

 もちろん、歩哨や定期的に都市を見回る夜警番とは別に、だ。
 
 これは異例なことが動いている、とすぐに察することができた。よく観察すれば歩哨も、巡回も増員されており、これは警戒度を上げると同時に、夜陰に紛れた兵士たちが部外者に見咎められたときすぐさま夜警の交代要員として言い繕うことができるなかなかにうまい手であると、バートンは見抜いた。


 だが、これではまるで戦時ではないか。

 ガレー船三艘の乗組員が上陸しているとはいえ、そして、一手指し手を誤れば、致命的な事態を招く可能性のある会談が持たれているとはいえ、この警戒度の高さは尋常ではない。

 いかにこのカテル島が異教徒との闘争のその最前線に位置しているとはいえど、だ。


 これでは、まるで今夜のうちに襲撃があることを予見しているようではないか。

 そうバートンが疑問を抱いた瞬間だった。

 一瞬、夜陰が真っ白に消し飛んだ。バートンの目に雪に煙るカテルの街並みがはっきりと焼きついた。続けて、腹の底に響き渡る――雷轟。

 ごうらん、と大気が爆ぜ、次に地面がたしかに揺れた。

 ただの落雷ではない、とバートンは瞬時に理解した。

 これは《スピンドル》能力者による戦闘行動の余波だと、強力な《フォーカス》とそこに伝導され発現した異能・超技の影響だと。さらに見抜いた。

 この効果は、〈シヴニール〉によるものだ。少なくとも最初の雷轟に、バートンは馴染みがあった。グレスナウとともに暗闘を続けてきた経験は伊達ではなかった。


 ここにアシュレが、若当主がいる。

 しかし、多くの住民が、何事かと雷光と爆音とが飛来した側に目を向けるなかで、バートンはひとり冷静に観察していた。


 その雷轟に呼応するように、カテル山のそこかしこが発光したのを。


 それは一瞬だったが、たしかな光をバートンは認めた。

 数人の騎士だろう男たちが市街からグレーテル派の教会が位置する丘を目指して駆けて行く。その教会の背後にカテル島はそびえている。

 バートンは見出したことを直感した。




 これこそが探し求める“なにか”だ、と。
 

















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