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自走式空想会社:クルーシブル

二匹の空想生命体・トビスケとまほそがファンタジーを創ったり、おいしいご飯を食べたりするブログ。

燦然のソウルスピナ 第三話・第六夜:噛み砕く微笑み

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燦然のソウルスピナ 第三話・第六夜:噛み砕く微笑み






 一昼夜、考えてみてくれ、とダシュカマリエは言った。


 けっきょくアシュレは昨夜、一睡もできていない。あてがわれたあの訓練場の宿舎で椅子に座したまま、夜を明かしてしまった。


 カテル島は風に恵まれた土地柄で、穀物を挽くのに風車を使う。
 その軋みと唸りがときどき離れた宿舎にも風に乗って届いてくる。


 それ自体はヒトの営みを感じさせるもので、アシュレにとって不快ではなかったが、昨夜ばかりはそれすら勘に触ったのだ。

 昨夜、ダシュカマリエに見せられたカテル島の秘密と《ねがい》の力によって肉体を蝕まれ、捩じ切られるような苦痛に耐えるイリスの姿が脳裏に、交互に去来し、アシュレを苛んだ。

 イズマに相談したかったが、こちらはいつの間にかあの広間からいなくなってしまっていて、ついに果たせなかった。

「けっきょく、一睡もしなかったな」
 対岸の長椅子に身体を横座りにして、シオンがいた。
 正装から楽な部屋着に着替え、ガウンを纏っていた。長椅子には羊の毛皮を敷き、ブランケットに身体を包んでいる。


「ごめん、つきあわせてしまったね」
「わたしも、同じ気分だったさ」

 卓上に並べられた軽食は、ほとんど手付かずのまま冷めてしまった。燭台の蝋燭は、燃え尽きる寸前だ。

「せめて茶だけでも点てなおそう」

 言いながらシオンが立ち上がった。
 アシュレはこれまでの経験で、シオンの入れてくれるお茶だけは天才的だと認めているからありがたかった。それ以外の家事は……互いの今後をかんがみて、言及を控える。裁縫や刺繍はどうなのだろうか。恐くて聞けない。


 いや、本当は古き血統に連なる夜魔の姫が、自分の世話をあれこれ焼いてくれている現状のほうが、奇跡に近いのだとアシュレは思い至った。

「ありがとう」
「アシュレ……そなただけが背負うことではないからな。最後まで、ともにわたしはおるからな」

 茶を点てるため厨房に向かうシオンが去り際、ささやいた。
 不意に胸の奥に熱が溢れてきて、アシュレは涙をこぼしそうになった。まるで女のコのようだと自嘲する。アシュレはまだ、“悪”どころか、男にさえなり切れていない。

 たしか、以前に、アシュレはイリスに言ったことがあった。
 カテル島へ向かう船――エポラール号のなかで、だ。


「ボクは“悪い男”になる、か。――むずかしいんだな」

 アシュレの定義した“悪い男”とは、本当に大切なものを護るため、あえて正しい側から誤った側にさえ踏み出せる男のことだった。そして、そのことに後ろ指を指されても笑い飛ばせてしまうような男のことだ。

 アシュレは窓を開け放った。

 宿舎は生活に不自由はないが、邸宅ではないためガラス窓などはまっていない。上がってきた朝日を浴びるべく、アシュレは鎧戸を押し開けた。


 ファルーシュ海の美しい光景が飛び込んできた。ちらほらと頭頂に雪化粧した島々が朝日に輝く。例年にはない光景――異常気象だ。

 夜明けと同時に、人々の営みはとっくの昔に始まっている。農閑期といえど、豚と羊をはじめとした家畜たちの世話、葡萄の枝の剪定、冬と強い風に備える家の修繕。
 日々の暮らしは待ったなしだ。


『ボクたちの《意志》――《スピンドル》だけが世界を動かしているわけではない。おなじように《ねがい》だけがこの世界の動力ではない』

 その光景に、アシュレは自分と、いま自分に繋がる膨大で広大なすべてを感じる。

『子は育つものです。父母から、周囲の人々から、環境から教えられ、学び取って。その努力を経ぬままに、それを敵と見なすことはボクにはできない』

 ボクが言ったことじゃないか。アシュレは深呼吸して、小さく笑った。

 そうだ。試すことなく、試みることなく、結論することなどできはしない。

 もし、すべてが悪い目に出たとき、ボクがどうするのか、そのことさえ決めればいいことだ。なんども自問することになるだろう。なんども決断を迫られるだろう。もしかしたら、決定的な“悪”に自分は成り果ててしまうかもしれない。望むと望まざるとに関わらずだ。

 ただ、そのすべてを己の《意志》において行う。このままならぬ世界において。いかなる理不尽にさらされようと。

 重要なことは決断を手放さないことだ。

 そのことを、まずボクが覚悟することだ。そして“その覚悟を生きる”ことだ。
 そう決意すれば、世界は驚くほど澄んで見えた。

 もちろん、不安も焦燥もなくならない。怯えも、理不尽に対する怒りも消えはしない。
 ただ、それでも。

「それでも、ボクは――」

 まなじりを固めたアシュレの視線の先で、だれかが手を振っているのが目に入った。
 斜面のしたから上がってきている。あきらかにアシュレに向かって手を振っている。笑顔で、なにか手に抱え、ミルクだろうか容器をぶら下げて。


 イズマだった。転びそうになり慌てて体勢を立て直す。ひょろりと伸びた長い手足が道化師みたいだ。

 あはっ、とアシュレの口から笑い声が漏れた。

 そうだった、とアシュレは思う。国ひとつ滅ぼすほどの“悪”を引き受けてなお、笑うことのできる男が、そこにはいたのだ。

 アシュレが手を振り返すと、さらに笑みを広げ、陽気になったクモみたいな、そんなうまく形容できない格好で走ってきた。
 あははっ、とアシュレはまた笑った。


 そのときにはもう、アシュレの心は定まっていた。


         ※


 その日の正午、アシュレはダシュカマリエに計画の受諾を伝えた。

 もちろん、来意を手紙にしてからだ。

 大司教は計画の中心人物であり、自身が儀式に参加している間の業務の引き継ぎ・割り振りを行っている最中だった。


 カテル島は南側を天として見た時、逆L字型に近いカタチをしており、その東の先に島最大の都市:カテルは存在する。軍事面での要である騎士団は、そこに各国、出身者の国別に騎士館を持つためダシュカはそちらに出向いていた。

 儀式間は、その護衛任務にノーマンが当たる。その了承は大司教からの要請があって後、騎士団長からの任命というカタチで成されなければならない。カテル病院騎士団は組織だ。面倒でも手続きを踏まなくてはならなかった。

「予想よりずっと早い決断だ。アシュレダウ、わたしはキミをすこし見くびっていたかもしれないな」
 相変わらず歯に衣を着せる様子もなく、はっきりとダシュカは言った。
「悩むことでイリスを救えるなら、そうしたでしょうが。それに、責任の所在を明言したのに、いざことに及べば実行できぬでは騎士としては失格です――政治家であればそれもあるいはひとつの手かもしれませんが」

「己の発言に――その責任に拘泥しているだけであるのなら――若いな、と評するところだが、己が規定する“悪”を認め、現実を前にして、それすら飲み干そうというのならば貴君はすでに“男”であると、わたしは評さざるをえない」

 ダシュカマリエの評価に、アシュレは高揚を隠せない。

「ありがとうございます。褒められたのだと解釈しておきます。ところで大司教の仰るところの“男”とはどういう存在ですか? よろしければ、後学のためにお聞かせくださいませんか?」
「恋愛対象である、という意味だ、アシュレダウ」

 さらり、と変わらぬ様子で無数の書類を決裁しながら、ダシュカは言った。
 アシュレはまた間抜けな顔をさらし、書類をまとめる秘書官がちらり、と流した瞳に堪えた笑いを見出してしまった。


「大司教猊下の冗談は、毒がキツ過ぎます」
「本音だからな。心に決めた男がいなかったなら、この場で恋に落ちていただろう」

 こじんまりとした執務室の巨大な机上に積まれた書類の束をまたたく間に切り崩し、ダシュカは秘書官に退出を命じた。客人への茶はわたしが入れる、と言って。

 シオンとイズマは同行していない。

 イズマは朝食をすませると、用事があると言い置いてまた出ていってしまった。
 シオンは宿舎にいる。

 決断を告げるだけだ。子供ではないのだから、つき添いはいらない。
 それに、いかに重鎮たちの理解を得ているとはいえ、イズマもシオンも本来なら人類の仇敵なのだ。騎士団の人間ばかりでなく、商用で訪れるものも多い市街地中心部へは姿を見せないほうが懸命だった。


 ただ、そのせいで思いがけずアシュレはダシュカとふたりきりになってしまった。ノーマンは騎士本館で手続きの最中だ。
 これは想定外のシチュエーションだ。


 銀の仮面に顔の半分を覆われているとはいえ、ダシュカが相当な美貌の持ち主であることはその仮面からのぞく相貌と鼻梁の尖端、唇と頬、そして顎から首筋へラインの見事さから、まず間違いないことだった。

 三十に達してはいると聞かされていたが、年齢を感じさせない硬質な美が、その法衣の上からでもうかがえた。
 なぜかどぎまぎし、さらには宗教的な意味での上位者からのもてなしを受け、アシュレは恐縮してしまう。

「大司教猊下は、気さくな方ですね。法王庁のお歴々とはだいぶちがう」
「実践主義者なだけだよ、アシュレダウ。ここカテル島は、あらゆる意味で現場なのだ。手が空いているものは上役であろうと使う。そうでなければ回らない。言を左右に、立場を考えて、などというヒマがないだけさ」

 アラムとの交戦という意味でも、病魔との戦いという意味でも、カテル病院騎士団は最前線にあったのだ。アシュレはそのことを再度身に染みて理解した。

 点てられた茶はハーブティーだった。
 茶葉は嗜好品であり、高価だったから大司教位にある人間が庶民の飲むような薬草茶を飲んでいることにも、アシュレは好感を抱いた。


「おいしい」
「そうかね。それはよかった。わたしの菜園のものだ。加工、保存もすべて自前だよ」

 最前線で鍛え上げられたカテル病院騎士団においてさえ、《スピンドル》能力者は十名を切る。ダシュカマリエを加えてようやく十名だ。

 そしてそのほとんどが戦闘職であるため、付属の病院でも異能による治療はほとんど行われていない。つまり外科手術と内科的継続治療、そして投薬がその基礎を成していることは、他の病院施設と同じなのだ。

 この時代の薬学、特に治療目的のそれは半分以上、薬草学とその根幹を同じとしていると言ってよかった。


 ダシュカの点ててくれたハーブティーの薫りのよさ、甘味の引き出しかたはシオンに匹敵するほどだった。そして、このハーブ類はすべて、ダシュカの手によるもの。
 それはつまり、ダシュカがハーブの育成から加工、保存、そして有効成分の抽出にいたるまで天才級の腕前を持つということになる。


 アシュレはダシュカを信頼に足る人物だと、それだけで思う。

 地道で、果てのない仕事をそれでもコツコツと続けていくことは、口先だけの理想では到底、不可能だからだ。

「それで、承諾に関して、ひとつだけある条件とは?」
「イリスとの面会です」

 彼女の意志を、直接確かめたい。アシュレは言った。

 ぱちくり、とダシュカの瞳が瞬きした。驚いたのだ。
「それは、そうだ。まったく、アシュレダウ、キミの言う通りだ」
 思いもよらなかったな、という口ぶりだった。
「当然の権利、というやつだ」


 その面会にはシオンも同行することになった。
 ダシュカとともに聖堂を出た途端、頭にヒラリが落ちてきた。突然現われたコウモリにダシュカは目を丸くして驚いたが、すぐに相好を崩し「触ってもいいかね」と訊いてきた。


 アシュレは数秒悩んだが、けっきょく断った。

「シオンとのリンク関係にあるので」
 と正直に理由を話すと、ダシュカはにんまりと笑ったものだ。
 たぶん、独占欲の強い男と勘違いされたのだとアシュレは思う。


 アシュレとシオンはヒラリを仲介にして、イリスが治療を受けている治療施設で落ち合うことを取り決めた。

「わたしが、同席する必要はないだろうが、病院騎士の同行が必要だろう。ノーマンを連れていけ」
「いいのですか?」
「夕方までに返してくれれば問題ないよ」

 これからまた、別の業務を片づけるのだというダシュカにアシュレは畏敬の念を抱きつつ、自らの懸念を話した。

「追手? 夜魔の姫の?」
「この天候が関係していると、シオンは言っていました」

 騎士本館へ向かうダシュカの護衛を兼ね、アシュレは馬車のキャビンに同室した。アシュレが聖騎士でなければ許されないことだ。

 朝はあんなに天候がよかったのに、陽が陰ってきた。風が冷たい。
 もしかしたら夕方からまた山間部では雪になるのかもしれなかった。寒さに馴れないカテル島の住民は狼狽気味だ。カテル島の低地では気温が十度を下回ることなどほとんどないからだ。


 今日の仕事を片づけるべく、人々が足早に歩き回るのがキャビンの窓からは見ることができた。この調子だと昼過ぎには市場は閉じてしまうかもしれない。
 主婦たちが今夜はスープにするのだろうか、島特産の海産物である雑多な小魚を買い求めている。それでベースを作り、普段はあまり使わないニンニクとトウガラシを加えた辛くて熱いスープで家族を寒さから守ろうというのだろう。


 ヴヴ、と窓ガラスが冷たい風に押されて鳴った。

「なるほど、シオン殿下は祖国:ガイゼルロンと袂を分かったと言われていたな。まさしく、追討の対象というわけか」
「土蜘蛛の王もやはり狙われる身であると、言っていました」
「うん、その話は聞いているよ」
「えっ? それは予言、という意味ですか?」

 アシュレは驚愕して訊いた。

「ある意味ではそうなるだろうが――今回のことは、わたしの異能と《フォーカス》:〈セラフィム・フィラメント〉の効果ではない。

 キミがわたしの異能について、どう考えているか知らぬが――すこしレクチャするならば『これから起きる出来事を逐一なんでも察知することのできる便利な能力』と認識しているなら、それは決定的にちがう。

 むしろ、わたしよりはるかな上位者――つまるところ聖イクス――が『伝えたいことを一方的に伝達してくる』ものだという方が正しい。
 その場合に限り、予言は具体的で精度も極めて高いのだ」


 アシュレはダシュカの言葉に震えた。

「聖イクスからの詔を受けるている」とダシュカは言ったのだ。

 ダシュカの持つ銀の仮面が、法王庁聖遺物管理課が認定した本物の聖遺物:〈セラフィム・フィラメント〉でなければ預言者を自称することは“舌がかり”と呼ばれ、異端審問の対象となってしかるべきだった時代のことだ。


 そして、その聖遺物が「《御方》の死骸との接続器である」ともダシュカは言った。

 ざわざわっ、と一度は収まったはずの疑念がぶり返しかけ、それを飲み下すようにアシュレは茶を干した。

 心に整理をつけ、せっかく拠って立った足場を失ってしまうような予感に、このときアシュレは躊躇したのだ。
 立て続けにその身にふりかかった巨大で残酷な事件に、アシュレ自身気がつかぬまま疲れていたのかもしれなかった。


 ありていに言えば、安心したかったのだ。イリスは助かるのだと、信じたかったのだ。

 だが、そのアシュレの動揺にはなんら心動かされた様子でもなく、ハーブティーの薫りを嗅ぎ、口を湿らせてからダシュカは続けた。

 だからこそ、アシュレはこの話題を流してしまった。

「個人的な望みから、物品や人物を探知することだってできるにはできるが、それもわたし自身が、かなりその物品なり人物なりを特定できなければだめだ。
 だから、そういう使い方をするときは事前に入念な準備・研究が必要になる。膨大な情報を事前準備もなく、能動的に、しかも自由に検索なり探索なりするには〈コンストラクス〉との結合が必要不可欠なのだ」


 アシュレはダシュカが勉学に、研究に、執政に貪欲である理由がわかった気がした。

「万能ではない、ということですか?」
「すくなくとも、ヒトの身にありながら神の視座を得ることなど、できないほどにはな。
〈セラフィム・フィラメント〉の予言は規模が大きすぎたり、上位者の主観によるため、『彼=聖イクス』が、なにを危機と捉えるかは我々には当然だが、到底、理解できないのだ。

 今回のことは『必要な試練』と上位者は判断されたのだと思うと言えば、納得がいくか?」



「それでは、先ほどの予言というのは?」

「今朝、朝食の席で聞いた。イズマ――イズマガルムといったか? 国民に忘れられ、廃位されたとはいえ土蜘蛛の王だった男の言葉だ。なにごとか策を巡らせる、と言っておったよ。それに、なかなか楽しい男ではないか?」

 心から楽しげに告げるダシュカに、アシュレは驚かされた。

「イズマは単独で会見を? それに策を打つって?」
「策についてはしらん。だが、アレが打つといえば打つのであろう。
 その裁可を求めにやってきたのだ。ここはわたしの領土だから、と。律義だろう? それから、キミは昼過ぎまでには来るだろうと予言していた。
 キミはその時刻をさらに一刻あまり縮めて見せたのだがな?」


 アシュレがイリスのことに囚われている間に、イズマはすでに行動を起していたのだ 思えば、宿舎を出る時に別れたあれは、その策を巡らせに行ったのではないか。そう思うとイズマという男について、アシュレは紛うことなき尊敬の念を抱いてしまうのだ。

「感謝を」思わず、イズマへの礼が言葉になった。

 それからアシュレはダシュカに頭を下げた。

「イリスを救ってもらうばかりか、恐ろしい追手を呼び寄せる我々を匿っていただいていること、なんとお礼を申し上げるべきか」
 そんなアシュレに、ダシュカマリエは平然と答えるのだ。

「それは違うぞ、アシュレダウ。

 キミとキミの愛する人々を守り通すことは、われわれカテル病院騎士団の総意であり《意志》だ。
 火傷を厭う者が、火に巻かれる母屋から家族を助け出せるかね?

 できれば火事になど遭わぬことが一番だが、いざ、それが起きてしまってから思い悩んでいるようでは、家族の命を危険にさらすことになる。
 我が騎士団にそんな腑抜けはいない。
 そして、そのような躊躇、尻込みは未来永劫、我々には不要なものだ。

 だから、これは我々がカテル病院騎士団が自分たちの確固たる《意志》=信念において起した行動の結果だと断言しておく。

 キミが謝るのでは筋が違う」


 決然と言いながら、ダシュカがアシュレの手を取り、面を上げさせた。

「それに、夜魔の精鋭:月下騎士団と土蜘蛛の凶手が揃い踏みとは、なんとも豪儀な話ではないか。

 実に――実に噛み砕きごたえのある敵だよ。

 アシュレダウ、キミは忘れているのではないか?」


 われわれはグレーテル派:カテル病院騎士団は、巡礼者たちを助け、病やケガを癒す責務を負った聖職者集団でもあるが、同時に異教徒や敵対者を粉砕する宗教騎士団でもあるのだよ?




 そう言ってのけるダシュカの赤い唇から真っ白い歯がのぞき、獰猛な笑みのカタチになるのを、アシュレは見たのだ。













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