※注意 ネタバレ ゾーニングとレーティングについて
以下のトピックには「燦然のソウルスピナ第三話」の「第一夜〜第十夜」までの概要が
すべて含まれています。
主なストーリーラインを明示してありますので「燦然のソウルスピナ第三話」を未読の方は、
これ以降に目を通されるより前に「小説:燦然のソウルスピナ」のカテゴリーに収録されている
「燦然のソウルスピナ第三話:第一夜〜第十夜」をご覧になられることをオススメいたします。
同様に「燦然のソウルスピナ第三話」の冒頭にも「第二話のあらすじ」が配置してあります。
「燦然のソウルスピナ」についての概略・キャラクターの変遷を把握していただくには
最適と存じます。
ネタバレに注意しつつ、ご利用下さい。
また、第一話冒頭でも警告してありますように「燦然のソウルスピナ第三話」には
R15ないしCERO「D(17歳以上)」に匹敵する残酷描写、性的表現などが含まれます。
直接的な表現は避けるよう配慮していますが、閲覧に際し、
充分に、ご注意くださいますよう、重ねてお願いいたします。
□第三話:第十夜を終えて(これまでのあらすじ)
オーバーロード:グランを討ち果たすため、人類の仇敵であるはずの二種族・夜魔の姫:シオンと忘れ去られた土蜘蛛の王:イズマと共闘したエクストラム法王庁の聖騎士:アシュレはその過程で、己に課せられた聖務に疑念を抱く。
ふたりの仲間とオーバーロードの手から救い出した娘:イリスを仇敵・異端と定める法王庁の追求から護りきるため、アシュレはカテル病院騎士であるノーマンの提案に応じ、その本拠地であるカテル島へと向かう。
その航路上に忽然と現れたフラーマの漂流寺院で、邪神と成り果てたかつての天使:フーラマと対決し瀕死の重傷を負ったアシュレであったが、夜魔の姫:シオンの献身により奇跡的に一命を取り留めた。
カテル島に辿り着いたアシュレとその仲間たちは束の間の平穏に包まれていた。
ファルーシュ海、西方世界の東端に位置するカテル島は、対アラム勢力との闘争、その最前線でありながら、その気候は穏やかで地勢にも太陽にも恵まれたこの世の楽園と呼べる島であった。
傷ついた肉体を癒しながらリハビリを続けるアシュレ。
心臓を共有することとなったシオンから注がれる夜魔の血により、驚異的な回復力を持つに至ったアシュレは瀕死の重傷から復活を遂げる。
だが、順調に回復を遂げるアシュレと対照的に、イリスは激しい嘔吐感と全身を襲う激痛にさいなまされるようになっていた。
イリスベルダ・ラクメゾン――イリスは厳密に言えばすでに人類ではない。
かつて、アシュレが戦い、シオンと、そしてイズマとともに打ち倒したオーバーロード=かつてのイグナーシュ王:グランの孫娘:アルマステラと、アシュレの幼なじみ:ユニスフラウの融合体――いかなる《ねがい》も叶えるという《願望機》にして《フォーカス》:〈パラグラム〉によって“救世主の母”としての役割を得た娘であった。
そして、すでにその胎内には、“救世主の父”であるアシュレとの子が宿っていたのである。
カテル島大司教であるダシュカマリエは、イリスの肉体を襲う苦痛の正体は、“救世主の母”としての改変がその身を襲うためだと見抜く。
そして、仕組まれた受胎であることを知りながら、アシュレもイリスも、その誕生を願う。
そのためにはすみやかに、“救世主の母”としての改変を終えてしまわなければならないとダシュカマリエは指摘し、そのための儀式――それを可能にする巨大な《フォーカス》の前に、アシュレたちを導いた。
カテル島の山中、その地下に掘り抜かれた大伽藍深奥でアシュレたちを待っていたのは、度肝を抜くような光景であった。
それは、あの〈パラグラム〉に匹敵するほど巨大な装置:〈コンストラクス〉――。
まるで、異教の邪神、その遺骸のようなこの装置こそ、運命に抗いイリスを救いうる唯一の手段だと、ダシュカマリエは説いたのだ。
いつか、イズマが話してくれた語ってくれた、見えざる運命の帳の向こうに居座るという真の敵:《御方》――その語りに登場した《偽神》を彷彿とさせる姿に衝撃を受け悪寒を感じながらも、アシュレは決断を下していく。
カテル島は聖母再誕の儀式に向け、胎動を始めたのだ。
一方、ほぼ時を同じくして、夜魔の姫:シオンと土蜘蛛の王イズマは追いすがる敵の気配を感じ取っていた。
夜魔の国:ガイゼルロンが擁する月下騎士団。
そして、イズマを裏切り者と定めつけ狙う土蜘蛛の暗殺者:凶手。
脅威が迫りつつあった。
風吹きすさぶ月夜の晩、先んじて上陸を果たしたのは土蜘蛛の暗殺者教団:シビリ・シュメリが育て上げた凶手:エレヒメアであった。
その上陸を予見していたイズマは単身、これを迎え撃つ。
それは、仇敵と見なされる異種族であり異邦人であるイズマが、同族をいかにして殺傷するのかをアシュレたちに見せるべきではないと判断したがゆえであったかもしれなかった。
息を飲むような攻防が闇に沈む荒野に火花を走らせる。
かつて教団の姫巫女であったエレは、その刃に憤怒と怨恨を乗せ叩きつけてくる――その激しい感情の裏側には、過去、愛したイズマに裏切られたのだという想いがあった。
だが、その想いすら受け流し、イズマは冷静に己が仕掛けた罠によってエレを捕らえる。
勝負が決したかと思われた瞬間、しかし、倒れたのはイズマのほうであった。
風に乗せてエレが飛散させた痺れ薬が、ついにイズマを搦め捕ったのだ。
痛み分け――いや、ここが自分たちの拠点である分の利を説くイズマの眼前で、エレの衣服の内側からもうひとりの凶手:妹であるエルマメイムが姿を現す。
己の用意した〈傀儡針〉:〈コクルビラー〉を逆手に取られ、打ち込まれたイズマは、ふたりの凶手の傀儡と成り果ててしまう。
そして、暗闘が決着しつつあったそのとき、カテル島を目指し進む船団があった。
緋色の旗に染め抜かれた円十字――それは。
(燦然のソウルスピナ:第三話:第十一夜に続く)