※注意 ネタバレ ゾーニングとレーティングについて
以下のトピックには「燦然のソウルスピナ第三話」において、これまで語られました「第一夜〜第二十夜」までの概要が、すべて含まれています。
主なストーリーラインを明示してありますので「燦然のソウルスピナ第三話」を未読の方は、
これ以降に目を通されるより前に「小説:燦然のソウルスピナ」のカテゴリーに収録されている
「燦然のソウルスピナ第三話:第一夜〜第二十夜」をご覧になられることをオススメいたします。
同様に「燦然のソウルスピナ第三話」の冒頭にも「第二話のあらすじ」が配置してあります。
「燦然のソウルスピナ」についての概略・キャラクターの変遷を把握していただくには
最適と存じます。
ネタバレに注意しつつ、ご利用下さい。
また、第一話冒頭でも警告してありますように「燦然のソウルスピナ第三話」には
R15ないしCERO「D(17歳以上)」に匹敵する残酷描写、性的表現などが含まれます。
直接的な表現は避けるよう配慮していますが、閲覧に際し、
充分に、ご注意くださいますよう、重ねてお願いいたします。
□第三話:第二十夜を終えて(これまでのあらすじ)
夜魔の姫:シオン、古代の土蜘蛛王:イズマとともにオーバーロード:グランを討ち、さらにイグナーシュ領からの逃避行のさなかに遭遇した廃神:フラーマも、カテル島病院騎士であるノーマン、そして数奇な運命の巡りから知己を得たオズマドラの皇子:アスカリアの協力を受け、これを退けたアシュレは瀕死の重傷を負いながらも、目的地であるカテル島に辿り着く。
それから、約一月の間、アシュレとその仲間たちは肉体と心の傷を癒しながら、束の間の平穏を享受していた。
ファルーシュ海、西方世界の東端に位置するカテル島は、対アラム勢力との闘争、その最前線でありながら、その気候は穏やかで地勢にも太陽にも恵まれたこの世の楽園と呼べる島であったからだ。
傷ついた肉体を癒しながらリハビリを続けるアシュレ。
心臓を共有することとなったシオンから注がれる夜魔の血により、驚異的な回復力を持つに至ったその肉体は瀕死の重傷から、奇跡の復活を遂げる。
だが、順調に回復を遂げるアシュレと対照的に、イリスは激しい嘔吐感と全身を襲う激痛にさいなまされるようになっていた。
イリスベルダ・ラクメゾン――イリスは厳密に言えばすでに人類ではない。
かつて、アシュレが戦い、シオンと、そしてイズマとともに打ち倒したオーバーロード=か つてのイグナーシュ王:グランの孫娘:アルマステラと、アシュレの幼なじみ:ユニスフラウの融合体――いかなる《ねがい》も叶えるという《願望機》にして 《フォーカス》:〈パラグラム〉によって“救世主の母”としての役割を得た娘であった。
そして、イリスは“救世主の父”であるアシュレとの子を宿していた。
カテル島大司教であるダシュカマリエは、イリスの肉体を襲う苦痛の正体は、“救世主の母”としての改変がその身を襲うためだと見抜く。
そして、それが《そうする》力、《ねがい》によって仕組まれた受胎であることを知りながら、アシュレもイリスも、その誕生を願う。
そのためにはすみやかに、“救世主の母”としての改変を終えてしまわなければならないとダシュカマリエは指摘し、そのための儀式――それを可能にする巨大な《フォーカス》の前に、アシュレたちを導いた。
カテル島の山中、その地下に掘り抜かれた大伽藍深奥でアシュレたちを待っていたのは、度肝を抜くような光景であった。
それは、あの〈パラグラム〉に匹敵するほど巨大な装置:〈コンストラクス〉――。
まるで、異教の邪神、その遺骸のようなこの装置こそ、運命に抗いイリスを救いうる唯一の手段だと、ダシュカマリエは説いたのだ。
いつか、イズマが話してくれた語ってくれた、見えざる運命の帳の向こうに居座るという真の敵:《御方》――その語りに登場した《偽神》を彷彿とさせる姿に衝撃を受け悪寒を感じながらも、アシュレは決断を下していく。
カテル島は聖母再誕の儀式に向け、胎動を始めたのだ。
一方、ほぼ時を同じくして、夜魔の姫:シオンと土蜘蛛の王イズマは追いすがる敵の気配を感じ取っていた。
夜魔の国:ガイゼルロンが擁する月下騎士団。
そして、イズマを裏切り者と定めつけ狙う土蜘蛛の暗殺者:凶手。
脅威が迫りつつあった。
風吹きすさぶ月夜の晩、先んじて上陸を果たしたのは土蜘蛛の暗殺者教団:シビリ・シュメリが育て上げた凶手:エレヒメアであった。
その上陸を予見していたイズマは単身、これを迎え撃つ。
激しい攻防の末、紙一重の勝利を収めたかに見えたイズマだったが、それすら、凶手:エレの手の内であった。
己の用意した〈傀儡針〉:〈コクルビラー〉を逆手に取られ、打ち込まれたイズマは、ふたりの凶手の傀儡と成り果ててしまう。
人知れぬ暗がりでその暗闘が決着しつつあったとき、カテル島を目指し進む船団があった。
緋色の旗に染め抜かれた円十字――エクストラム法王庁から派遣された枢機卿:ラーンベルトと“聖泉の使徒”と呼び習わされる聖騎士」ジゼルテレジアを中核とする使節団である。
聖遺物管理課の長でもあるラーンの口からもたらされた法王:マジェスト六世の逝去、そしてその姪であり最年少にして史上初の女性枢機卿であったレダマリアが新法王に選出された、との報に、カテル島に衝撃が走る。
しかし、カテル病院騎士団を預かる団長:ザベルザフトは、その衝撃に動揺しているわけにはいかなかったのである。
なぜなら、枢機卿:ラーンと聖騎士:ジゼルのふたりこそ、エクストラム法王庁への帰還命令を無視してこの地に逃れたアシュレと、その一行の追討者であったからだ。
表向きの歓待、その裏側で激しい政治と諜報の戦いが繰り広げられる。
そして、百年に一度の異常気象。
舞い落ちる雪片とともに、最後の役者がこの地に足を踏み入れる。
悪魔の爪――そのふたつ名を持つ青き花:フィティウマをその家紋に頂く北方の夜魔の国:ガイゼルロンの騎士たち。
月下騎士団のなかでも実験的な側面を強く持つ残月大隊が、ついにその姿を現したのだ。
その侵攻を水際で食い止めるべく、アシュレはシオンとともに立ち向かう。
光条とプラズマ焔が交錯し、土煙と血臭がたちこめ、激しい剣戟と放たれる異能が降り積もり始めた雪化粧を荒々しく引き剥がしていく。
アシュレの初撃とそれに続いたシオンの〈ローズ・アブソリュート〉の一撃により、配下を失い激しいダメージを負いながら、だが、夜魔の騎士:ヴァイツはその優れた指揮官としての能力でカテル島を混乱の渦に巻き込んでいく。
紅蓮の業火に包まれる市街。
侵攻する夜魔の軍団とこれを迎え撃つカテル病院騎士団。
激しい攻防に、互いの血が、肉が、骨が削り取られ、命が散ってゆく。
その地獄絵図の夜の頂点で、ついにヴァイツはカテル病院騎士団団長:ザベルザフトと相対する。
死力と絶技の限りを尽くして戦うふたり。
ザベルの握る聖剣:〈プロメテルギア〉がヴァイツを捕らえた瞬間、ヴァイツの牙がザベルの左腕を引きちぎった。
上級夜魔であるヴァイツは、その血肉から、そこに溶ける《夢》から、ザベルが真に守ろうとしたものとその在り処を知ったのだ。
すなわち、“聖母再誕”の儀式と、すべての中心にいる娘――イリスベルダの存在を。
鉄風雷火の夜が明け、血の色の太陽が昇っても――まだ、まだ決着はついていない。
手負いとなり追いつめられた夜魔の騎士は、しかしその牙をいっそう鋭く研ぎ上げ、
暗躍する土蜘蛛の凶手、エレとエルマの姉妹はイズマを虜として策謀を巡らし、
エクストラム法王庁が投じた追討者たちが着々と、決して知られてはならぬ真実に肉迫する。
そして、カテル島は鳴動する。
歴史が、運命が、大きく動き出そうとしていたのだ。