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自走式空想会社:クルーシブル

二匹の空想生命体・トビスケとまほそがファンタジーを創ったり、おいしいご飯を食べたりするブログ。

燦然のソウルスピナ 第一話:第十夜・運命(さだめ)に抗って

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燦然のソウルスピナ 第一話:第十夜・運命(さだめ)に抗って

「お楽しみデシタネ」 

 いつの間に上がったのだろうか、イズマが小屋のわらに腰かけ雑炊を啜っていた。

 ノーマンが作ったのだというそれは、粒の砕けた古い雑穀と乾燥させたキノコで作った粗末だが心のこもったものだった。イゴ村の食糧事情をかんがみれば、手をつけるのをためらうほど貴重な食事だったが、燃料にいたるまで、すべてが自身の持ち込みであるとノーマンは言い、アシュレはそうであればと頂くことにした。


「いや、ほんに、ノーマン様には助けられております」
 村の長とその付添が数名、食事に同席していた。先ほどの戦闘で指揮をとっていた人々だった。口々に助太刀の礼を言われた。
「ノーマン様らグレーテル派に続いて法王庁の聖騎士様まで来てくださったとなれば、こりゃあ、イグナーシュの夜明けは近こうございますな」

 グラン様のお導きに違いない、と長は言い、どこからか雑穀で作ったどぶろくを取り出した。前祝いということで、と手渡された粗末な杯をアシュレは丁寧に断った。

 困惑した様子の長たちを引き取ったのはノーマンだった。
 急ぎの旅であること、治療と休息が必要であることなどを説きながら村人たちを小屋の外に出し、とりなした。


「まずは、少しお腹に入れたらどうですかね」
 その様子に頓着せず、イズマが椀をよそってくれた。
「たいしたもんじゃないけど、悪かない」

 尊大な態度が板につきすぎていて、アシュレは諌めるタイミングを逃してしまった。
 イズマの食いっぷりがあまりに見事だったせいもある。
 ぜんぜん、ぜんぜんたいしたことないっすワ、と言いながら見ている間におかわりするさまは理屈抜きで見事だった。


「事情説明のわりには、ずいぶん水音激しいもんでしたケド。ナニしてたのかなー」
 イズマの揶揄に、盗み聞きか、とシオンは冷たい視線を返した。
「洗ってもらってた服、乾いてたから届けにいっただけでー」

 いままでならしおれてみせるほどの視線を浴びても、しれっとして、イズマは言った。仲間はずれにされて明らかに拗ねていた。

「ユーニスちゃんって、美人なんでしょ? アシュレのカノジョ? それなのにまずいんじゃないかなー、カノジョほっといて別のナオンとふたりっきりで温泉はいってたりしちゃー。それって浮気じゃねーかナー」
 告げ口しよー、っと。まるで子供のようにイズマが言った。

「浮気などではない。本気だ」

 シオンが断言し、イズマが固まった。
 じわり、とイズマの瞳に涙が溜まり、シオンに向き直った。効果は絶大だった。


「しょ、しょんなー」    

「子供じみた嫌がらせをいますぐ止めんと、本気でアシュレを愛するぞ。そうなれば浮気ではないのだから、しかたあるまい? ただ、そうなったら、貴様は関係ないな。わたしとユーニス殿の問題だからして」
 一瞬にして涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったイズマの顔が、役者顔負けの速度で友好的になった。アシュレの口から自動的に乾いた笑いが漏れた。

 ノーマンが入ってきて、アシュレの傷を手当てしはじめた。話を続けてよいものか、アシュレはためらった。アシュレたちの敵対者はグラン王そのヒトということになる。この村の成立を考えればここでこれから先の計画を練ることは難しいように思われた。

 だが、ノーマンはそんなアシュレの胸中を先回りして言った。

「お話を続けてください。カテル病院騎士団の一人が、期せずして伺った話を他言するようなまねはいたしません。ご安心を」
 カテル病院騎士と聞いてその場の全員が色めき立った。
 あの奮戦ぶりから予測はしていたが、やはり、ノーマンはただの修道僧などではなかったのだ。


 カテル病院騎士団とはファルーシュの内海に浮かぶ孤島・カテルに城塞を築く戦闘集団であり、対岸の地で勢力を拡大する異教・アラムの教主(カリフ)たちをして「毒蛇の牙」と震え上がらせた西方世界最強の独立騎士団であった。
 西方諸侯の三男坊や、門弟が所属するカテル騎士団には毎年多額の寄付金が寄せられ、その資金源となっていた。また、彼らは最前線で戦う騎士であるだけでなく、優れた治療技術を持ち、聖地巡礼を行う人々を無償で助ける慈善事業者でもあった。
 聞き及ぶところによれば、その施療院の技術・設備は本国・法王庁付属病院をはるかに凌ぐという。先だっての戦闘で彼が見せた戦闘能力の高さを思い出し、アシュレは納得した。

 そして、彼も
《スピンドル》能力者であると知った。

 小さく目礼し、ノーマンは無言でアシュレの傷を拭った。小さな錆や刃の破片が残っていないか確かめていたのだ。
 夜魔の娘と土蜘蛛の男を眼前にしてもノーマンという男の行いに揺らぎはなかった。偏見や差別という概念自体が、ノーマンには端から備わっていないようだった。

「問題は……ないのですか?」
「生死が表裏一体である戦場で、小さな差異に拘泥するということがいかに危険かは、皆さんのほうがご存知だと思いますが」

 
 必要最低限の受け答えをするノーマンは、なるほどたしかに宗教騎士団の男だった。
 アシュレは頷き、ノーマンを信じると決めた。それから口を開いた。
 作戦会議とこれからの方針を決めなければならなかった。


「グランの居所は?」
「奴は墓所にいる。それは間違いない。〈パラグラム〉はものが大きすぎて墓所からは動かせぬ。そして、いまや墓所は奈落の底、穴のなかだ。イズマ、占術の結果は間違いなかろうな」
「いままで外したことなんてないでしょー。保証しますよ。ただねー、おふたりがいちゃついてたロスタイムがねー」
「愛する、と言ったはずだが」
「も、もうしわけございませぬッ」

 恥も外聞もなく頭を下げるイズマに、アシュレは静かな憐憫の情を抱いた。

「だいたい、ゲヘナから呼んだ炎は退いたのか」
「弱まってはいますが……まだ、あと一刻は燃えてる予定です」
 イズマはしゅん、となってしまった。
「責めているわけではない。あの技の行使は戦術的にも仕方がなかった」
「ほんと?」

 奇妙な角度で面を上げたイズマは笑顔だった。なにがほんとうの感情なのかわからなくなるような変わり身の素早さだった。

「だが、墓所へは近づけぬ……か。少なくともあと一刻あまりは」
「人助けが常に自身の望む結果を招くとは限らない、ということですかね」
 イズマの軽口に、アシュレは心臓の真上を靴底で踏まれたような痛みを憶えた。

「教訓はあとにせよ」

 アシュレの胸中を思いやるシオンの気づかいに、珍しくイズマが抗弁した。
「熱さが喉元過ぎてから叱っても、子供は育ちませんヨ、姫」

 イズマの口調は相変わらず軽かったが、その諌言はもっともだとアシュレは思った。
 この事態を招いたのはアシュレ自身なのだ。それに、イズマは必要以上に状況の悪化を言い立てなかった。悪い想像はいくらだってできる状況だった。それを口にすることでアシュレの焦燥を煽ることは容易だった。
 だが、そうはしなかった。悪戯に傷口を責めて相手を苦しめる輩とは違った。
 イズマなりに気をつかってくれているのだ。


「炎が収まるまでは、どうにもなりません。焦ることには意味がない。ここは墓所へ着いたあとのことを考えましょう」

 沈痛な面持ちでアシュレは告げた。
 シオンが頷き、イズマが頭を掻いた。まずは戦力の把握からだった。

「グランの能力は?」
「基礎的な不死者の特徴――超回復能力と不滅性に加え、奴はその肉体に獰悪な病魔の群れを巣くわせ衣服として纏っている。触れただけで肉体を蝕む猛毒の着衣だ」
「それは……黒い霧のようなもの?」

 よく知っておるな。感心するシオンにアシュレは答えた。

「ボクの隊を襲った奴だ」
 グランに対する怒りがふつふつと湧き上がるのをアシュレは感じた。自身のなかにあった降臨王への憧憬が、明確な敵対心へと変わっていくのをアシュレは感じていた。

「そなたの槍の――〈シヴニール〉というのか――光条は効くのか」
「散らすことはできる」

 先刻の戦闘内容を思い出しアシュレは言った。〈シヴニール〉で活路を開き、アシュレは包囲を脱したのだ。手応えのようなものはなかったが、効かないのではなく爆発的な増殖能力に戦力が追いつかなかっただけのことだと観察していて思った。

「本体が物理的実体を持つものなら、間違いなく効くはずだよ」
「では、黒霧への対処は〈シヴニール〉がもっとも効果的だな。どうも手応えのない相手には〈ローズ・アブソリュート〉は効率が悪い」
「至近距離からの《エンゼル・ハイロゥ》なら再生する暇ひまも与えず一掃できる」
「憶えたての技を過信するでない。逸るあまりに見境いなく放つでないぞ。あんなものに巻き込まれたら黒焦げでは済すまぬ。〈シヴニール〉の加護がなければ使い手さえ危うくする大技だ。……そういえば、そなた、咳込んでいたではないか」
「あ、あれは……たしかにそうだけど、次はもっとうまくやるさ。イズマさんにコツを教授してもらったし」
「そなたの危機に、いつもわたしが隣りにいてやれるとは限らんのだぞ」
「まるで恋人同士の会話にしか聞こえませんが」

 つまらなそうに頬に手をつきイズマが言った。半開きの目が二人を見ていた。
 アシュレは赤面し、その様子にシオンが動揺した。


「イズマッ、茶々を入れるでないッ。それにアシュレッ、なぜ、そこで赤くなるッ。そなた、それではまるで二人の間にやましいところがあるようではないか!」

 はあ、とイズマが溜息をつき、ふたりをたしなめた。

「戦力分析がどうのと、仰っていましたけどね、おふたりさん。いま我々が考えないといけないのは正面戦力のことではなく、人質救出という厄介事を、あのグラン相手に成し遂げなけりゃあならんということですよ。軍事的規模で見れば奴は万を超える軍勢を従える王。戦力だけ見ても生前の比じゃない。これって、どこかの軍事大国の遠征規模ですよ?」

 長い指を眼前にかざしてイズマは言った。

「対するこちらは、馬と羊を入れても頭数は五。正面衝突したら踏み潰されるだけです」
 べええ、とどこかで羊の声がした。
「では、どうするのだ?」
「奇手しかないでしょう」
「単身で忍び込む、とか」

 大胆すぎる、とシオンが睨む、悪かない、とイズマがアシュレに視線を流した。当然キミがやるんだよね、その役は。そういう目だった。アシュレは背筋を伸ばして応じた。当然だと。さすが聖騎士、とイズマは芝居がかった仕草で感心した。

「混乱に乗じることができれば、むしろ単独行動のほうが可能性は高いかも」
「せめてふたりは必要であろう」
 だれが背中を護るのか。シオンは食い下がった。
「万超えの軍団相手に、混乱を作る役はだれがするんで?」

 う、とシオンが言葉に詰まった。なるほど戦略的・戦術的面ではイズマの独壇場だった。真偽のほどは不明だが、かつて王だったというのはあながち嘘ではないかもしれない。

「因縁のある姫が復讐戦に出てきたとなれば、グランだって動きますよ」
「陽動、というわけですね」
「アシュレくんは難しい言葉を知ってるね。囮とか釣り餌とかとも言う」

 失敗すると食われる役さ。茶目っ気たっぷりにイズマが言った。

「だが、釣りをするのに餌は外せないさ」
「貴様はどうする気だ」

 主導権を奪われて面白くないのか、ふてくされた態度でシオンが指摘した。

「もちろん、姫のおそばを離れるもんですか。羊もね」
 愛の僕(しもべ)ですから、と笑顔でイズマは言った。言葉づかいが間違っている気がしたが、アシュレは指摘するのをやめた。時間がなかったのだ。

「お願いできますか?」

 囮の役を。真剣にアシュレは言った。ヒュー、とイズマが口笛を吹ふいた。

「いちばんあぶないのは、キミなんだよ、アシュレくん」
「でも」
「でも、これはボクのせいだから、とかって思ってんの?」

 呆れ半分、感心半分という様子でイズマが首を左右に傾げて見せた。

「思い上がらないでもらいたいね。こっちにはこっちの事情があんの。いくら美人だからって、見ず知らずの男の恋人のために命張るほど、ボクぁ甘かないし頭悪かあないんですよ」

 だいたい眼前に見るまで美人かどうかなんてわからんでしょ? 
 大抵ハズレなんだそういう前フリは。腹が立つ。
 昔日の経験がものをいうのだろうか、苦味走った表情でイズマは言った。


「紙はあるか。羊皮紙でもよいが」
 ペンとインクも。シオンが言い、イズマがすぐに応じた。取り出されたのは、立派な羊皮紙だった。なにの皮なのかアシュレは想像して、すこし恐くなった。
「なにに使うんで?」
「墓所の見取り図だ」

 シオンは紙面にペンを走らせた。その筆捌きを見てアシュレは確信した。夜魔の一族は記憶を忘れることができないのではないかというあの直感は、間違いないことだと。

「十年前のものだが、深部の改装はできんはずだ」

 アシュレはシオンの物言いと眼前に描かれつつある図面を見ておかしなことに気がついた。墓所のある区画から奥がありえないほど整然としていたからだ。これって、と声が出た。

「気づいたか。これこそがイグナーシュの遺産――〈パラグラム〉だ」

 アシュレはシオンの言葉に愕然となった。動かせぬ、とのシオンの言に漠然と大きいものなのだろうという予測はたてていたが、まさか建造物そのものがそうだとは思いもよらなかった。

「進入経路はいくつかあるが、潜入は戦端が開かれた後のほうがよいであろう」
 図面をよく見て検討だけはしておくことだ。
「〈パラグラム〉の通路、幅が狭いな。〈シヴニール〉は使えない。外で数発掃射、使い捨て、という感じだね。生きて帰っても聖騎士は辞めなきゃならないな。下手すると縛り首かも」
 迷いのない口調でアシュレは言った。会心の出来の冗談だったつもりだが、シオンは笑わなかった。イズマだけが笑っていた。

「ただの鋼では不死者を滅するのは困難だぞ」
 そなた、武具はどうするのだ。シオンが指摘した。
「盾を使う。お目にかけてないけどバラージェ家の家宝のうちの、もうひとつも持ってきているんだ。〈ブランヴェル〉。最高の盾だよ」

 アシュレは言い、一度部屋を辞した。
 案内に手当てを終えたノーマンが付き添ってくれた。辺りはすっかり闇で、家々から夕餉の灯と煙が漏もれていた。
 村の防壁側だけが夕焼けのように赤く、ごうごうと恐ろしい音がしていた。火勢が引くにはまだ時間が必要だと思われた。


 アシュレは馬屋に赴き、ウェポンラックから盾を降ろした。
 カイトシールド。上端の半分が切りかかれ窓になっている。重量は通常のものの半分以下しかない。外縁が薄く刃のようになっており、白兵時はここを使う。
 シールドコンバットは騎士の戦闘技術の中でもっとも基礎的なものだ。もちろんアシュレも習熟していた。


「どうだろう」
 アシュレは焚火の炎を浴びて鈍く輝くそれをふたりに披露した。

「〈シヴニール〉のような超常的攻撃能力はないけれど、逆に強力な力場を盾の表面に作り出せるから」
「限定的空間なら刃に対して圧倒的に有利か。なるほど、これと〈シヴニール〉は対の品なのだな。本来の運用ではこれで〈シヴニール〉からの逆流や余波を防ぐものなのだ。高速機動中の馬上掃射は変則的スタイルだということか」
「骸骨野郎には効くんじゃないすかね」
「その上で、ボクは甲冑をつけません。つまり、盾だけを携えて潜入します」
「潜入というより、突入だね、そりゃあ」

 じゃあ、これも持っていくといい。
 イズマは己の荷物からいくつかの薬品と貴石を差し出した。錬金術絡みの代物だった。こればかりは、たとえ法王庁の門前町であるエクストラムでもおいそれと手に入れることはできない。正真正銘・土蜘蛛の謹製品だった。

 イズマはそのひとつひとつをつまみ上げ、丁寧に用法と効果を解説してくれた。


「やっぱり、ホントはいい人なんですよね。イズマさんって」

 しみじみと言うアシュレに、イズマは心外そうな顔をした。

「いまごろ気づいたのッ? 遅い、遅いよ、アシュレくんッ! イズマの魅力に気づくのが遅すぎるッ! ……ホントは、って、じゃあ、いままでどう見えてたの?」
「……へんなひと?」
 ひきっ、とイズマの顔が引きつった。
「じゃあ、いまは?」
「へんだけど……いいひと?」
 返しなさいッ。イズマはアシュレの手から先ほどの品々を奪いかえそうとした。

 くっくっくっ、と鳩が喉を鳴らすようにシオンが笑った。

「よろしいですか?」
 そこにノーマンが姿を現した。そういえば、さきほど馬屋までアシュレを案内してくれたあと、ノーマンは姿を消していた。

「お話はお済みになられましたか」
 ノーマンの申し出の意味がわからず、一同は互いに顔を見合わせ、それから頷いた。

「グラン王の墓所へ赴かれるとか。しかも、急いでいらっしゃる」
 間違いありませんか、表情を変えず問うノーマンに、アシュレは緊張して答えた。

「はい。しかし、集落を護る炎が消え去るまでは動くに動けず」
「村長と交渉しましたところ、墓守だけに口伝された古い道があるそうで、事態が事態だけに特別に通過を許してくださるそうで」
 ニコリともせずに告げるノーマンにアシュレは心底驚かされた。この男は自発的にアシュレたちを助けるため、陰ながら働いてくれていたのだ。

「しかし、どうやって村長を説得されたのです?」
「国を救うためグラン王の力を借りる必要があるのだ、と。アシュレダウさまは、そのための試練を受けるため法王庁から派遣されたのだと説明いたしました。これなら派手に暴れられても説明がつくでしょう」

 こんどは驚きで一同が顔を見合わせた。ノーマンのしたことは一種の詐欺ともいえたからだ。方便、というには強弁が過ぎた。

「嘘をついたのかと問われれば、その通りですとしか言いようがありません。懺悔ならばすべてが終わったあとでいくらでもしましょう」

 すべての真実を明らかにすることが、民に救いをもたらすとはかぎらない。

 年若いアシュレには、にわかには納得しがたい論理だった。だが、ある側面ではあっても真理と信念を持って生きる男の強さに、アシュレは抗するする言葉を持たなかった。
 なにより、ノーマンはアシュレたちのために自ら汚れ役を買って出てくれたのだ。


「すぐにでも出立できるよう取り計らいましたが?」
「ありがとうございます」
「礼を言われるようなことではありません。わたしたちはあなたがたに助けられた身です。恩を受けたならそれを返さねばヒトとしての示しがつきません。それに……ここだけの話、わたしは嘘をつくのが得意なんです」

 ぺろり、と舌を見せてノーマンが言った。

 あの巌のような顔のまま。

 アシュレは目を丸くして驚いた。ノーマンは冗談を言ったのだ。よほど間抜けな面をしていたのだろう。ノーマンの顔がほころんだ。笑うとなんとも人好きのするいい顔だった。


「生きていれば、またお話したい」
「ご武運を」

 こうして、一行は墓守の道へと足を踏み入れたのだ。











さて、ついに第十夜、ターニングポイントを折り返した「燦然のソウルスピナ」。
いかがでしたか?


一万超の軍勢を率いるオーバーロード:グランに対し、アシュレたち三名は絶望的とも言える
戦いを挑みます。

あるものは愛する者のため、あるものは過去の過ちを精算するため、そしてまたあるものは、
己の心にその理由を伏せたまま。

彼らの行く末に立ちふさがる敵は、強大です。

次回のソウルスピナでは、アルマとユーニスの再会、そして過去の接点が語られます。

では、次回
「燦然のソウルスピナ」第十一夜でお待ちしています。




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