※注意 ネタバレ ゾーニングとレーティングについて
以下のトピックには前作:「燦然のソウルスピナ第一話」の概要がすべて含まれています。
結末まですべて明示してありますので「燦然のソウルスピナ第一話」を未読の方は、
これ以降に目を通されるより前に「小説:燦然のソウルスピナ」のカテゴリーに
収録されている「燦然のソウルスピナ第一話」をご覧になられることをオススメいたします。
また、当ブログ冒頭でも警告してありますように「燦然のソウルスピナ第二話」には
R15ないしCERO「D(17歳以上)」に匹敵する残酷描写、性的表現などが含まれます。
直接的な表現は避けるよう配慮していますが、閲覧に際し、
充分に、ご注意くださいますよう、重ねてお願いいたします。
これまでのあらすじ
エクストラム法王庁に籍を置く史上最年少の聖騎士:アシュレは強力な光条を発する
竜槍:〈シヴニール〉の使い手であった。
ある晩、アシュレは聖遺物を収めた管理保管庫に潜入した夜魔の姫:シオンと遭遇する。
予期せぬ遭遇に戸惑いながらも奮戦するアシュレだったが、シオンの圧倒的な体術に遭遇は
アシュレの敗北に終わる。
だが、不思議なことにシオンはアシュレの命を奪わなかった。
敗北から立ち直ったアシュレは、聖遺物管理課の同僚である尼僧:アルマの協力を
得ながら追跡するものの、力及ばず、
ふたつの聖遺物:〈デクストラス〉と〈ハンズ・オブ・グローリー〉を奪われてしまう。
翌朝、法王:マジェスト六世から聖遺物奪還の勅詔(ちょくしょう)を受けたアシュレは、
幼なじみの女従者:ユーニス、聖堂騎士団の面々とともに、賊を追い、
内戦により荒廃したイグナーシュ王国領へと向かう。
尼僧:アルマが前夜のうちに行方知れずとなり、夜魔の手にかかったのではないかという
疑念に心を乱されたまま。
だが、法王領とイグナーシュ領の国境の村:パロでアシュレは放っていた密偵から
アルマに関して、驚愕の事実を知らされることとなる。
アルマが以前より旧イグナーシュ王家の騎士とたびたび会っていたこと。
その騎士:ナハトの称号はどうやら偽造されたものであり、その正体はイグナーシュ王家転覆に
際して活動したテロリスト集団「群狼士団」の中核メンバーであること。
そして、アルマ自身が滅びたイグナーシュ王家の末裔:姫君であること。
伝説に語られる降臨王・グランの孫娘であること。
残酷な真実に打ちのめされながらも、アシュレは事実の糸をよりあわせ、
この事件の実行犯がアルマであるとの推理にいたる。
奪われた聖遺物のうちのひとつ〈デクストラス〉こそは、かつてイグナーシュ王家の
至宝であったのだ。
それを王家滅亡のきっかけとなった革命戦争のさなか、法王庁が回収したのである。
アルマはそれを知り、なんらかの思惑によって持ち出したのだ。
アシュレ一行の向かう先:イグナーシュ領はすでに人界ではなかった。
そこは《閉鎖回廊》(バード・ケイジ)と呼び習わされる魔境の地。
強力な支配力により人々の運命すら操る暴君:オーバーロードの封土であった。
その危険性を知るアシュレは単身乗り込むことを決めるが、アシュレの身を案ずる聖堂騎士団の面々は同道を強硬に主張し、アシュレはついにこれを認めてしまう。
結果として、アシュレはすべての部下——ユーニスまでも——失ってしまう。
亡者の群れに包囲され、自らの命も危うくなったそのとき、
追いつめられたアシュレを救ったのは、なんとふたりのヒトならざるものたちであった。
すなわち、土蜘蛛の王:イズマ。
そして、運命の夜、アシュレを床に這わせた夜魔の姫:シオンであった。
聖遺物:〈ハンズ・オブ・グローリー〉を介してシオンが振るう輝く大剣こそ、
かつて聖人:ルグィンの佩刀であった聖剣:〈ローズ・アブソリュート〉、それであった。
その助力により一名をとりとめたアシュレは、運命の奇妙な巡りによって、
イズマとシオンのふたりと共闘関係を結ぶこととなる。
イズマの占術によってユーニスの生存を知ったアシュレは、シオンの有する
聖遺物:〈ハンズ・オブ・グローリー〉の奪還よりも、ユーニスの救出を優先する。
占術が示した場所「神封の大虚=王家の墓所」へと急ぐ一行の眼前で、
荒れ果てた祖国を見放さず亡者の群れに抵抗する人々の家屋が襲われる光景が飛び込んできた。
目的を最優先するべきだと主張するイズマを退け、アシュレはその村落:イゴの人々に
加勢する道を選択する。
圧倒的な物量に苦戦を強いられながら、ふたりの共闘者、イゴ村に滞在していた
修道僧:ノーマンの助けを借り、アシュレたちは辛くも亡者の群れを撃退することに成功する。
だが、そのために使用した拠点攻撃用の異能の余波で、数時間の遅延を余儀なくされる。
進退窮まったアシュレは、ノーマンの勧めに従い、イゴ村の護り水:温泉に身を浸す。
ユーニスを思い逸る心に苦しむアシュレに、シオンは共闘の理由と己の失敗を話す。
すなわち、このイグナーシュを《閉鎖回廊》とし牛耳る者——オーバーロードの正体を。
そして、どうして彼がオーバーロードと成り果てたかを。
イグナーシュに居座る悪意の正体、
それこそはアルマの祖父:偉大なる降臨王:グランそのひとであった。
渦巻く陰謀と、圧倒的な狂気、そしてその原因を生み出してしまったシオンの懺悔を、
しかし、アシュレはすべて飲み干して見せる。
そして言った。
「ともに戦う」と「友として」と。
絆を深めたアシュレたちはついにグランと相対する。
グランは骨と皮ばかりの姿となり、その身に触れるすべての生ある者を喰らう
漆黒の法衣を纏っていた。
ユーニスを救出するため、甲冑を脱ぎ、聖なる盾:〈ブランヴェル〉だけを携え、アシュレは
王家の墓所=巨大な聖遺物にして願いを集める《フォーカス》:〈パラグラム〉へと突入する。
一方でシオンとイズマのふたりが陽動となり、グランと一万超の軍勢を引き受けていた。
突入した〈パラグラム〉内部で待ち受けていた魔剣士:ナハトを激戦の末に下し、
墓所深奥部へ駆けつけたアシュレを待っていたのは、しかし、残酷すぎる現実だった。
そこには、ユーニスがいた。アルマも。
ただし、文字通り一心同体となって。精神を共有して。
亡者に蹂躙され瀕死だったユーニスを救うため、アルマは〈デクストラス〉と
〈パラグラム〉の力を使い、融合を果たしたのだ。
それは、アシュレへの愛を貫こうとした女たちの悲しい決断だった。
事実に打ちのめされるアシュレに、待ちかまえていた白のグラン=偉大な降臨王としての側を
引き受ける分身=投影(プロジェクタイル)は、
「ふたりの決断と行動を認めてやってはどうか」と促す。
千々に乱れる心に翻弄されながらも、必死の抵抗を試みるアシュレだが、
その肉体はすでに死魔の毒に侵されていた。
ナハトとの戦いで負った傷、その切っ先に猛毒が仕込まれていたのだ。
死に行くアシュレを救うため、アルマとユーニス、ふたりの女の融合体となった彼女は
再び〈デクストラス〉と〈パラグラム〉を用いる。
アシュレは〈パラグラム〉に溜め込まれた《ねがい》を注入され、
理想の主・王者へと改変される。
すなわち、やがて来る「“救世主”の父」としての役割を負わされたのだ。
あらゆる業苦を人々に成り代わり受け止め、世界を救う救世の主。
その子を授かるため、アルマたちはアシュレと交わる。
一方で、アシュレとの死闘の果てに瀕死の重傷を負ったナハトは、己自身の野望・願望を
同じ方法で叶えようとした。
だが、それは制御できぬ《ねがい》を自らに流し込む行為であった。
怪物と化したナハトを白のグランは見捨て、その結果として、外部に陣取る黒のグランが
その始末を引き受けることとなる。
一方、《ねがい》に翻弄されるままアルマたちと交わったアシュレは、
その後遺症に苦しんでいた。
他者に自分の意志を乗っ取られ、悪意のままに振る舞いそうになる衝動に、だ。
そのアシュレを救うため、すべての武装を手放し転移によって駆けつけたシオンは、
アシュレに注がれた《ねがい》をその身を挺して受け止めた。
夜魔の姫の純潔と尊厳を捧げる自己犠牲によって自分を取り戻したアシュレは、
最後の戦いに臨む。
そこには“救世主”の誕生を確かなものとするため“すべての悪をひきうけること”を覚悟した、
完全体としてのグラン=“物質に凝った悪”が待ち受けていた。
伝説に謳われる闘いがそこにはあった。
アシュレ、シオン、イズマ、英雄たちの決死の奮戦に追いつめられたグランは、
ついに自らに〈デクストラス〉を打ち込み、なかば自刃としての攻撃を放つ。
割り割かれたグランの肉体を「門」として流れ出した悪意の奔流に
窮地に陥るアシュレとシオン。
ふたりを救ったのは、おなじくイズマの身を挺した異能の行使であった。
光り輝く蝶が悪意の群れを駆逐していくなか、古代の王としての正体を現したイズマは
アシュレに〈デクストラス〉を託す。
己の役割を悟り、〈シヴニール〉を携えたアシュレはシオンの助力を受けて宙へ駆け上がる。
すべての《ねがい》を集約させる聖遺物:〈パラグラム〉とそこに蓄えられた人々の無責任な
《ねがい》こそが、グランを、アルマを、ユーニスを“そうした”元凶であると、
これまでの旅路でアシュレは悟るに至っていたのだ。
そして《ねがい》を打ち込むための道具である〈デクストラス〉を弾核として、
アシュレはグランの背後にそびえるもの=〈パラグラム〉を撃ち貫く。
《ねがい》による支えを失ったグランは咆哮をあげて消滅した。
闘いはひとまず終わったのだ。
救国の英雄の帰還に人々が沸き立つ中、
アシュレのかたわらには、あの惨劇から救い出したひとりの女性の姿があった。
すべての記憶を失ったアルマ、いや、ユーニス……その女性をアシュレはイリスと名付けた。
イグナーシュを救ったにも関わらず、
人類の仇敵である夜魔、土蜘蛛と共闘した罪でアシュレは法王庁から裁かれる運命にあった。
同時に、イリスの出自は異端審問官の目を引かずにはおらないだろう。
煩悶するアシュレに、修道僧:ノーマンが提案する。
彼の属するグレーテル派の本拠地:カテル島に身を寄せないか、と。
アシュレはわずかな逡巡の後、決断した。
「いこう」と。
東へ。海を通って。
旅が始まったのだ。
■第二話メイン・キャラクター紹介
□アシュレ(アシュレダウ・バラージェ)
エクストラム法王庁に所属した史上最年少の聖騎士であった。
竜槍:〈シヴニール〉ほか、いくつかの《フォーカス》を有し、個人での戦闘能力で
一軍に匹敵する実力を持つに至った。
前回の事件(ソウルスピナ第一話)を通し、夜魔の姫:シオン、土蜘蛛の王:イズマと共闘。
その後、法王庁に対する疑念と戦場を共にしたシオン、イズマとの関係、そして、救出した最愛の女性であるユーニスと、その心を受け止めたアルマの融合体=イリスを護るため、法王領からの離反・脱出を決意する。
現在、カテル病院騎士団の一員であるノーマンの申し出により、快速船:エポラールの船上。
オーバーロード:グランとの対決を通し、騎士として、また人間的にも大きく成長しつつあるが、
女性関係に関してはまったく割り切れない様子で、自己嫌悪に陥りがち。
明らかな女難の相持ち。
愛馬:ヴィトライオンも牝馬である(?)
□シオン(シンザフィル・イオテ・ベリオーニ・ガイゼルロン)
北方の大国にして夜魔の国:ガイゼルロンの第一王女であった。
現在は父:スカルベリ、国元とも決別。強大無比の聖剣:〈ローズ・アブソリュート〉を佩く。
峻厳で清冽な印象の容貌で己の優しさを鎧う気丈な姫。
前回の事件を通して人間の聖騎士(アシュレ)との間に、友情を超えた想い、関係を育んだ。
それは明らかな恋慕・思慕の情となって顕現することになる。
オーバーロード:グランとの間にあった因縁を解決し、アシュレの逃避行に同道する。
400歳を超えて生きる魔女だが、こと恋愛に関する事柄には奥手の極みで、
今回はその崖っぷちで大いに煩悶することになる。
□イズマ(イズマガルム・ヒドゥンヒ)
いったいなにを考えているのか、どこをみているのか、判然も釈然もしない漂泊の男。
風に吹かれて転がる草(タンブル・ウィード)のごとく、無責任きわまりない言動と、しかし
周囲を巻き込まずにはいられない行動力で今回も話を引っ張っていく存在。
前回の事件を通じ、アシュレには弟や息子を見るような視線を送るようになったらしい。
本人にそんなつもりがあるかどうかは、例によって定かでない。
ときどきマジメ。
酔っぱらったり、歌ったり、踊ったり、女性陣に呆れられたり、今回もそんな感じらしいです。
相棒の脚長羊も健在。(名前はないそうです)
□イリス(イリスベルダ・ラクメゾン)
アシュレたちの活躍によってグランの居城より救出された女性。
その実体はかつてのアシュレの幼なじみであったユーニスと、聖遺物管理課で同僚を務めていた
アルマが聖遺物:〈デクストラス〉と〈パラグラム〉によって融合を果たした姿。
フラッシュバックのように襲いかかる過去の記憶の断片を受け止め、立ち向かう。
その過程で、またもアシュレに恋してしまうのは……運命を操るなにものかの思惑なのか?
肉体的にはアルマのものをほぼ完全に受け継いでいるために、かなりのナイスバディと
推察される。
船上においてメガネの形をした《フォーカス》:〈スペクタクルズ〉を獲得し、
ヒロインの座を狙う(?)。
今回、いろいろな意味でアシュレは追いつめられる。
□ノーマン(ノーマン・バージェスト・ハーヴェイ)
前回の事件においてアシュレたち一行を陰ながら支援し、脱出経路を提案した男。
じつは西方世界の東、ファルーシュ海の果てにある島、カテル病院騎士団の擁する筆頭騎士。
消滅の力を司る強大無比の《フォーカス》:〈アーマーン〉を所持する。
(イラストはその展開途中のもののようだ)
厳格で無口、強面と宗教騎士団の男を地で行くノーマンだが、
今回は人間的な部分、年長者としての見識、イズマとの化学反応が引き起こす
珍プレーなどがさまざま明らかになる。
カテル島大司教位であるダシュカマリエ・ヤジャスとの関係も興味深い。
□アスカ(アスカリア・イムラベートル・オズマドラ)
アラム勢力の大国:オズマドラの皇子。
今回の冒険の舞台となるフラーマの漂流寺院に、事件解決のため軍勢を率いて乗り込んでくる。
ハッキリとした性格の持ち主で、激しやすいが乾性であり陰湿なところがない。
父親であるオズマヒム・イムラベートルは「東方の騎士」と謳われるほどの傑物。
それがなぜ、数千の軍勢を旗下に配したとはいえ、嫡男であるはずのアスカを
危険な廃神のすみかに送り込んできたのか。
謎は深まる。